コンセプト

作品“behind the back”はプーケット島のルート上にあるビルボードや立て看板をその背後から撮影した写真で構成される。私が滞在する中で、印象に残った風景とは島内に多く見られる商業的な広告群だった。それら広告の裏側を見ようとするために、地図を頼りにモーターバイクと徒歩による移動をしながら撮影を続けた。薮の中や分け入った小道に入って行き、その目の前に広がっている風景全体から発ち現れてくるものとは、リゾート地として思い描かれるプーケット島の“表”のイメージとは異なり、その裏に息づく力強いリアルなもう一つのプーケットの姿であり、プーケットに住む人たちの住居や視点から眺める光景だった。本作品では、そのような情報の裏側の風景を写すことを主眼として制作された。
(2006/12/28プーケットにて)

リフレクション

僕にとって、写真を撮ることはどこか撮影することでその向き合ったもののことをしばらく保留することに似てる。後になって、そのことについてゆっくり考えるとか、ゆっくり考える暇がなければそれは本当に長い間おかれることもあるし、結局見いだされないままのものもある。ただ、撮影するからには、自分にとってシャッタをきるだけの何かは画面のどこか、もしくはその瞬間の近くにあるんだろう。ビルボードの表側は、数枚しか写真を撮っていなかった。観光客向けって書いたけれど、意外とタイ文字もあるし、そういうのばっかりでもないようだ。今思い返すと、表側はきっと僕にとってはあまり魅力的なものではなかったんだと思う。正確に言うと僕はその広告自体を必要としている人間ではなかったからだ。広告が示すような商品やサービスの価値や意味から遠い存在。プーケットを訪れる観光客とも、現地で生活する人とも違う、bewilderみたいな存在として、島に降り立った僕にとっては、表側のいろんな装飾やキラキラしたものよりも、その後ろ側にあった、むき出しの構造やリサイクルのブリキの継ぎ接ぎの感じとか、そんなタイの風景の方が、そのときも今も、よほど良い感じだと思えたし思える。
(2007/05/14日本岐阜にて)