1926年にタルボットによって写真が誕生して以来、その歴史とは主としてフィルムと印画紙を記録媒体とした、銀塩による粒子の集合・集積として形成されてきた。また近年のデジタルカメラの普及とともに、銀塩粒子からデジタル化されたピクセルの集合へとイメージの媒体が移り変わってきている。一方、ビデオはSDからHDへ、高精細化するという流れがあり、このような二つの実写表現における動向のなかで、私はビデオと写真の中間領域的な表現が可能を模索したい。
本作では私は暗室そのものを「イメージが立ち現れる象徴的な装置、場所」としてとらえることができるのではないかと考える。またこれまで述べたように、銀塩からデジタルへと、メディウムとしての写真が変移する地点にいることを考えると、社会的に暗室という場所のもつ機能がコンピュータのモニタ上に置き換えられること、銀塩写真の技術が伝統工芸化するという情況は避けられないことは自明である。そのような時点としての現在において、本作で全ての撮影乃至編集作業を暗室の中で行うことは、私が写真について考察する上で非常に重要な意味を持っている。
(2007/02/6)

データ

Video/HDV/Stereo/16:9/Color/9.5min/ 2007.02.