コンセプト

Processing Photography Brink Seriesは写真と視る行為、また視線とイメージの関係に新しい結びつきを与えるための試みとして制作された。本作はMax/MSP/Jitterによって開発されたプログラムによって動作し、鑑賞者の瞬きを解析しそれをトリガとして表示する写真を変える。マウスやキーボードの操作ではなく、「眼差しの器官」として目を表示する写真のシークエンスとをダイレクトに接続することによって、新しい写真の鑑賞方法を提案することを狙いとしている。

Processing Photography

Processing Photographyとは鑑賞形態を含めたパッケージ型のデジタル写真作品を言う造語であり、具体的には鑑賞者の振る舞いをビデオカメラ等のデジタル入力デバイスで解析し、鑑賞時間へと応用する。鑑賞行為の有り様を取り込むことによって、撮影対象や行為に内在しているダイナミズムをより直接的に鑑賞者へと伝えるために、撮影するモチーフや表示方法においても、デジタル写真および表示装置としてのデジタルデバイスの特性を利用することで、紙やフィルムの写真とは異なるデジタル写真独自の表現を目指している。 またProcessing Photographyはデジタル写真と画像解析および表示プログラムを合わせたパッケージ型の作品であり、今後の展開としてアプリケーションとしてパッケージ化したものをウェブサーバー上で公開することを予定しているため、美術館やミュージアムといった公共空間での展示ではなく、個人が日常的に扱うラップトップ型コンピュータの視聴環境および一般的な室内照明の下での鑑賞を想定して制作されている。

Detail

"ver. Crawl 02"は、日の出から日没までの時間、河を下流から上流へ遡るようにして一定距離ごとに移動撮影した写真群であり、総計およそ3000枚の写真を撮影したものである。このバージョンはこのように大量に撮影されたデジタル写真をザッピングするように鑑賞することを意図している。"Strobo"では、鑑賞者が眼を閉じようとした瞬間、ストロボ撮影された写真がわずかな間だけ表示されて消える。この作品では、ディスプレイ上に表示される写真としての像ではなく、眼に焼き付いて一瞬で消えてしまう残像を鑑賞者に提示する。"Camera Eye"では、表示される映像を鑑賞者が見つめ続けた時間を合成して、一枚の静止画を生成するという作品で、目がカメラになるという体験を創出する。